“法歯学”で児童虐待見抜く 虫歯多く未治療、変色など
歯の鑑定で遺体の身元確認などを手助けする「法歯学」をめぐり、発覚しにくいとされる「児童虐待」を見抜く診察が注目されている。専門家らでつくる「日本法歯科医学会」も設立され、歯科医と捜査現場との新たな連携や研究の蓄積などによって、児童虐待の早期発見につながると期待されている。(伊藤真呂武)
法歯学が認知されるようになったのは、520人が死亡した昭和60年の日航機墜落事故。遺体の損傷が激しく、身元の特定は難航したが、群馬県警に委託された法歯学者や民間の歯科医が歯型や治療痕の照合を行い、犠牲者の40%以上の身元確認にこぎつけた。
墜落事故後、歯科医が警察の鑑定業務に協力する「警察歯科医」制度が全国に広まり、身元確認の事例が蓄積されてきた。また、平成16年のスマトラ島沖地震など国内外の大規模災害の現場に歯科医が派遣されるケースも増え、派遣業務に対応する学会の設立を求める声が上がっていた。
一方、歯科医の重要な役割として近年、注目されているのが児童虐待の早期発見だ。
口の周りが切れたり、歯が欠けるといった外見的特徴のほか、虫歯でないのに歯が変色していれば、過去に殴られるなど強い衝撃が加えられた可能性が疑われるという。
東京都歯科医師会が14年度に、虐待を受けた12歳以下の170人を対象に歯の状態を調査したところ、虐待児童は一般児童より虫歯が多く、未治療の傾向が見られた。
調査によると、6歳未満の虐待児童の47.6%に虫歯があり、都内平均20.9%の2倍以上。虫歯の数は都内平均0.9本の3倍以上の約3本で、未治療は約半数にのぼった。特にネグレクト(養育放棄)の児童は、ほかの児童と比べて虫歯所有率は約8ポイント、本数は約2本、未治療の虫歯所有率は約7ポイント高かった。
身体的な児童虐待は服を脱がせないと発見が難しい場合もあるが、12歳以下の児童は、自治体や小学校で定期的に行われる歯科健診で早期発見が期待されている。