カスタムメイド人工骨の臨床研究順調に経過
東京大学医学部付属病院ティッシュ・エンジニアリング部(高戸毅・部長)と(株)ネクスト21(東京都文京区本郷、鈴木茂樹・社長)は、事前にカスタムメイド形状の人工骨をつくり、顔の顎部分の形成のため実際の患者に移植する臨床研究に成功した。これは、基本的に固定せずに手術中には目的部位の骨膜下へ挿入するだけで、 従来の人工骨移植手術に比べ非常に短時間で移植手術でき、患者への負担を小さくできる。また移植後に自分の骨にほとんど置換できない従来の人工骨とは違い、吸収性がよく早期置換ができる。今後は治験を秋から開始する予定で、2010年の実用を目指す。
両者が開発したカスタムメイド人工骨は、患者の顔面部分のX線CT画像を基に、変形した顎などに補填したい移植骨の形状を3次元データとして作成し、インクジェットプリンターを用いた3次元積層造形法でつくるものである。
これは、既存の人工骨として多用されている「アパセラム人工骨」などとは、成形方法が大きく異なる人工骨である。「アパセラム人工骨」は、焼結したハイドロキシアパタイト材料であり、生体内での吸収速度は非常に遅く、ほぼ非吸収性である。これに比べて今回の「カスタムメイド人工骨」は、非焼結のリン酸カルシウム硬化体材料であり、焼結アパタイトより生体活性が高く、移植後は徐々に体内へ吸収され、再生される自分の骨と置き換わるのが早いのが特徴だ。
焼かないので柔らかいが、ある程度の固さがあって支持力はある。荷重部位の骨としては移植できないが、顔面部分などに活用できる。移植してぴったり固着させるには、1ピースでなく2、3ピースのカスタムメイド人工骨にするのがベストだという。
これまでに、動物への移植試験でその有効性を確認し、昨年6月から今年7月までに10名(女性9名、男性1名)の顎部分の骨欠損や骨変形患者に対して移植する臨床研究を、同病院顎口腔外科・歯科矯正歯科で医師主導により実施した。その結果は、各患者疾患部形状は改善され、副作用などの安全性に大きな問題もなく経過してきた。
そのため、今後の治験へ向けて厚生労働省に治験計画届の提出をすでに済ませた。年内にはこのカスタムメイド人工骨の有効性と安全性を評価するための治験が開始できる見通しだとしている。治験は「非荷重部位骨のうち頭蓋骨、顎顔面骨、または自家骨移植後の腸骨等の欠損または変形」を対象疾患として、70名を予定。
治験実施の候補としては、高度医療技術をもった東大医学部付属病院顎口腔外科・歯科矯正歯科、東京歯科大市川総合病院歯科・口腔外科、鶴見大歯学部付属病院口腔外科、獨協医科大病院口腔外科・形成外科、神戸大医学部付属病院歯科口腔外科、順天堂大医学部付属順天堂医院形成外科、埼玉医科大病院形成外科・美容外科、京大医学部付属病院形成外科、大阪医科大付属病院形成外科、大阪市立総合医療センター形成外科の10施設を予定している。