« 厚生労働省、「2006年度老人保健事業報告の概況 | メイン | 「歯の数減ると…医療費アップ」 4本以下 20本以上の1.6倍 »

唇閉じて 歯はかまない

今の歯科医療は生物学的アプローチが全盛である。つまり歯科における二大疾患であるむし歯と歯周病は、いずれも口の中にいる細菌が関係し、その細菌を駆除、あるいはコントロールできれば、すべて解決すると考えられている。だから、口の中の細菌の固まりであるプラーク(歯垢(しこう))を除去する、プラークコントロールが重要であるとされている。歯磨き、歯間ブラシ、フロスを使用して徹底的に口の中をきれいにしなさいと、私自身もこの欄で幾度となく解説してきた。

 もちろん、それは間違いではないし、今でも二大疾患の予防の一番の選択肢である。この生物学的アプローチは、歯科治療が長年行ってきた機械的アプローチへの反省であり、反動でもある。むし歯は削って詰めれば治ると信じられていたし、歯が抜けても正確に削って、精密なブリッジを入れれば、元のように復元すると、歯科医も患者さんも信じていた時代への反動である。

 ところが、長年患者さんを拝見していると、どうもプラークコントロールだけでは解決しないいくつかの症状があることに気がついた。プラーク一つないきれいな口なのに、むし歯のように冷たいものや、熱いものにしみる症状を呈していたり、まるで歯周病のように歯がぐらついていたりするのである。

 こういう症状を呈する患者さんの多くが、働き盛りのサラリーマンであったり、受験を控えた子供を持つ主婦であったりする。こうなれば、心因性ストレスを含めたストレスの影響が大きいことは、容易に想像できた。ストレスにより知らず知らずに歯を食いしばり、さらには夜間睡眠中の歯軋(ぎし)りへと発展していく。その揚げ句、歯を守る大切なエナメル質が欠けたり、ひびが入ったりして、下部の象牙質に影響を及ぼして知覚過敏を呈する。歯が丈夫だと、歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)を壊して、細菌が原因ではない歯周病をおこす。

 日本には古くから、歯を食いしばって頑張りますなんて言葉があるが、歯は食事で咀嚼(そしゃく)するとき以外は噛(か)んではいけないのである。爪(つめ)をかじるのも、鉛筆をかじるのももちろんいけない。歯でビンの栓を抜くなんて冗談でもやってはいけない。噛みしめる癖のある人たちに、歯科医の中では知る人ぞ知るおまじないがある。「唇閉じて、歯は噛まない」。

About

2008年04月30日 14:54に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「厚生労働省、「2006年度老人保健事業報告の概況」です。

次の投稿は「「歯の数減ると…医療費アップ」 4本以下 20本以上の1.6倍」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。