放射線医学総合研究所の分子イメージング研究センター・
先端生体計測研究グループ・機能融合研究チームの
平野好幸研究員らは、神奈川歯科大学の小野塚実教授らとの
共同研究により、ものを噛む“チューイング”動作が脳に刺激を与え、
得た情報を一時的に保つ「作業記憶」の向上を
もたらす効果があることを明らかにした。
このようなチューイング効果の計測に成功したのは
世界でも初めてのこと。
ニューロサイエンス・レターズ誌に掲載された。
疫学研究および認知心理学研究ではチューイングが、
認知や注意を増強させるという研究が行われているが、
増強されているのが記憶なのか注意なのか、
記憶の中でも作業記憶か即時記憶なのかなどはまだ不明瞭であり、
論議の段階のままとなっていた。
同研究グループはチューイングが脳にもたらす影響を解明するために、
チューイング前後に作業記憶のテストを行った際の脳活動の変化を、
ボランティアの協力のもと、脳の血流量などの変化する領域を
画像化する機能的MRIを用いて計測した。
その結果、チューイングは集中力を増強させるだけではなく、
脳の背外側前頭前皮質の活動に影響を及ぼし
作業の正解率を回復させる効果があることがわかった。
今回の成果によって、“チューイング”が認知機能に与える影響を
解明する糸口になることが期待される。
ものを噛む“チューイング”動作が動物実験により、
空間記憶に影響をもたらしていることはすでに知られている。
最近研究が進み、このチューイングが人の認知成績や
注意を増強する効果があることなどが明らかとなってきた。
また、ポジトロン断層撮影法を使った脳の機能診断が進み、
チューイングによって脳の活性する部位が明らかとなり、
fMRIを使った研究では頭頂前頭関連にチューイング効果が
確認されるようにもなってきた。
小野塚教授らはfMRIを利用して、この現象の解明に挑戦、
大脳の前頭前野を含む脳の多様な部位を活性化させることを
見いだしてきた。