東北大学大学院歯学研究科の鈴木治教授(顎口腔機能創建学分野)は、
同大学大学院医学系研究科井樋栄二教授(整形外科学分野)、
同大学院医学系研究科博士課程4年宮武尚央らと共同で、
高い骨再生促進作用を有する人工合成の骨補填材、
「低結晶性リン酸オクタカルシウム」の開発に成功した。
骨の腫瘍摘出後における骨欠損等、骨の移植が必要とされる患者への
適用が期待される。
本研究成果は、英国科学雑誌「Biomaterials(バイオマテリアルズ)」の
オンライン速報版で公開された。
OCPは、生体の骨の無機成分、ヒドロキシアパタイト結晶と同様に
カルシウム、リン酸、水等から成る結晶であり、
Hapの前駆体に位置づけられる物質。
従来から人工骨として用いられる素材である合成のHapと比べ、
OCPは顆粒状において、高い骨形成能、新生骨との置換能を示し、
また骨芽細胞を活性化する作用を持つことが、
これまでの研究から明らかになっている。
今回、新規に合成に成功した「低結晶性OCP」は、
動物実験レベルながら、従来のOCPと比べ、注目する領域において、
平均1.69倍の骨形成能を示す。
OCPを物質科学的に改質してカルシウムおよびリンの組成割合を
わずかに調節して、一部アモルファス化させた。
骨形成が促進されるメカニズムは完全には解明できていないが、
今後の基礎研究および慎重な実用化検討を経て、骨の腫瘍摘出後における
骨欠損等、骨の移植が必要とされる患者への適用が期待される。
従来から、純粋なOCPの合成は難しいとされていた。
鈴木教授らは先に、安定的にOCPを得る合成方法を確立して、
桜井実東北大学名誉教授(整形外科学分野)らと共同で、
OCPに優れた骨伝導能があることを世界で初めて報告し特許化している。
これまで、このOCPは、同大大学院歯学研究科越後成志教授、
同大大学院医工学研究科の鎌倉慎治教授らにより、
中型動物で優れた骨再生能が確認されたコラーゲンとの
複合体に用いられている他、同大大学院歯学研究科佐々木啓一教授らと
金属材料へのコーティングについての共同研究がなされている。
また、OCPを用いた骨補填材は、鈴木教授らと共同でニプロ(株)が
実用化検討を進めており、「低結晶性OCP」の成果は
既に特許出願がなされている。