ヒト体性幹細胞を用いて、再生医療に取り組む上田実氏
(名古屋大学医学系研究科教授)は、抜け落ちた乳歯の
歯髄組織から採取できる幹細胞を、脳神経や心血管などの
再生に活用する研究に取り組んでいる。
このほど開かれた第4回日本胎盤臨床研究会大会で、
現況が報告された。
iPS細胞を利用した再生医療の進展が期待されているが、
上田氏は「現時点では、ヒト体性幹細胞を用いた
組織レベルの技術が、一部実用化されているに過ぎず、
iPS細胞の実用化にはまだ時間がかかる」と説明。
その上で、インプラント手術における骨髄由来間葉系幹細胞の
骨再生への応用や、美容のしわ取りなど、
実用化への具体的な取り組みを紹介すると共に、
現在研究を進めている乳歯幹細胞の現状を示した。
乳歯幹細胞は乳歯の歯骨髄組織中にあり、
高い増殖能を示し、多分化能を有する幹細胞だ。
これまでの研究から、骨髄由来の間葉系幹細胞に
類似した性質を持つことが分かっている。
上田氏によれば、乳歯幹細胞は
▽安全▽高い増殖能▽高い分化能▽採取が容易
など、再生医療への応用条件を満たす優れた幹細胞。
特に増殖能・分化能では、ES細胞やiPS細胞には劣るものの、
骨髄や細胞由来の間葉系細胞には勝ることから、
骨系、脂肪系、神経系、血管系などへの分化が可能で、
有望な幹細胞供給源になり得るとした。
また、乳歯は自然に脱落するためドナーの負担が少なく、
簡単な操作で幹細胞が得られることも、有望な理由に挙げた。
名古屋大医学部は昨年12月に「乳歯幹細胞研究バンク」を設立した。
現在は乳歯幹細胞の臨床応用に向けた基盤づくりとして、
乳歯歯髄幹細胞のキャラクタライズ、組織再生能の評価、
バンキングに向けた輸送・保存条件の検討などを行っているという。
上田氏は、「今後、バンキングシステムが構築されれば、
将来、生きた自己細胞を必要なときに必要な数用いて、
再生医療を受けることが可能となる」と話すと共に、
「骨髄に代わる効率的で侵襲の少ない安全な細胞供給源として、
乳歯幹細胞が難治性疾患の治療に応用されることも期待される」
と述べた。